U-17男子日本代表世界選手権の収穫
8月8日から16日までドバイで開催されたU-17男子世界選手権が終了し、
アメリカが3大会連続3回目の優勝で幕を閉じました。
日本代表は1勝6敗、16チーム中14位でした。
結果だけみてしまえば、
「日本人はバスケに向いていない」
「身長が大きい海外の選手たちには勝てない」
などネガティブな意見で片付けられてしまうかもしれません。
しかし日本はアジアや世界との差を少しでも縮めていかなければなりません。
今回のU-17男子世界選手権で日本バスケット界はたくさんの収穫がありました。
言い換えれば、17歳以下の選手たちやバスケを愛するファン以上に、バスケットボールへ携わっている大人たちが、世界との差を学び、見つめ、そして、解決すべき課題が明らかになったと言えるのではないでしょうか。
我々が考える、高校生以下から国際レベルで活躍するために、日本のバスケットプレーヤーおよび指導者が身に付けるべきスキルは以下の3点です。
1)
海外のレベルに慣れなければならないアウトサイドのオフェンス
日本はアメリカと対戦し、122点を決められ、36点に終わりました。
試合を振り返ると、オフェンスは、インサイドでアメリカ代表のブロックにあい、アウトサイドからのシュートは確率を上げられませんでした。
これは、全国上位レベルの高校バスケでは走力が勝敗を大きく左右するため、普段、1on1で経験したことがない手の長さ、跳躍力を持つ選手とのマッチアップが原因によるのものです。
海外にはスピードがさほど無くても、タイミングをずらし、オフェンスを有利に進められるガードが数多く生まれています。これは身体が大きい選手に対して、どうすればボールを取られず、確率の良いシュートが打てるか、考えて練習に取り組めているからです。
学生時代からアメリカなど海外に挑戦できる環境は、日本のアウトサイドプレイヤー育成において、至上命題です。
日本は初戦で準優勝をかざったオーストラリアにオーバータイムまで持ち込みました。決して世界の強豪国にまったく歯が立たない訳ではありません。
いろいろな対戦相手との経験を増やすことで、接戦は増え、ときには、勝利することもできるようになります。
アウトサイドからのオフェンス経験値を上げるだけで得点力不足は必ず解消されるはずです。
2)
ガードやフォワードのエースを中心にしたオフェンスの組み立て
将来、日本代表のエースとなる可能性を存分に秘めている八村塁選手は大会得点王に輝きました。
スピードで翻弄し、効果的なシュートを要所で決められるオフェンスは今後さらに磨きをかけていって欲しいと思います。
日本のバスケは、プロリーグでも身長の高い選手がいるインサイドにボールを集めて、組み立てるオフェンスが一般的となっています。今回も八村選手のポジションはパワーフォワードとセンターでした。
しかし、インサイドを中心にしたオフェンスは相手にとって守りやすく、アウトサイドは単調なオフェンスを選択せざるを得ません。
ガードやフォワードのエースからオフェンスを組み立てられると、ディフェンスはストレッチせざるを得ず、守るエリアが広がるため、崩されやすくなります。
NBAでも2011~13まで2連覇を飾ったマイアミ・ヒートと2013-14に優勝したサンアントニオ・スパーズはインサイドに選手を置かない「スモールラインナップ」をオフェンスの武器としてチャンピオンの座を射止めました。身長にこだわらないオフェンスシステムはいまや世界のスタンダードです。
日本代表チームも多くの戦術を取り入れ、成功と失敗のなかから、新しいムーブメントを起こし、バスケットボール界を引っ張っていって欲しいと思います。
3)
ナショナルチームを頂点としたピラミッド構造
八村塁選手だけでなく、現在の日本は若い世代に優秀な選手がたくさんいます。
NBAダラス・マーベリックスのサマーリーグに参加した富樫勇樹選手。
ジョージワシントン大学に進学中の渡邉雄太選手。
高校時代の延岡学園から注目を浴び続け、東海大学を引っ張るベンドラメ礼生選手。
それぞれ活躍する舞台が違うため、一緒にプレーする機会はこれまで多くありませんでした。
サッカーの日本代表は国内・海外のクラブでそれぞれ活躍し、ワールドカップ予選の重要な試合で勝利をもたらすことで日本国民の関心を集め続ける存在となっています。
日本のバスケットボールも、世界で活躍する選手が現れ、代表が強くなることで、多くの国民に希望や感動をもたらすことができます。
そのためにも、代表を頂点として、オリンピックや世界選手権の予選勝利を目指して、チーム一丸となって戦っていく必要があります。
ぜひ、今まで以上に国民が代表の試合へ興味を持つ環境の整備を切望します。
以上の内容はすぐに変化を生み出さないかもしれません。
しかし、高いレベルに継続して挑み続ければ、その差は着実に埋まっていくはずです。
男子日本代表には、アジアのライバル国から勝利するために、海外経験豊富な選手を輩出し、世界の檜舞台へ、どんどん挑戦していって欲しいですし、我々も支援する活動を積極的に生み出していきたいと思います。